三井ゴールデン・グラブ賞

受賞者特別インタビュー

恵まれた体格と強肩、俊足を活かし、守備に打撃に活躍を見せるオリックス・バファローズの糸井嘉男選手。今シーズンはリーグトップの打率(2014年9月15日現在)を誇り、躍進の牽引役としての存在感が際立った。プロとしての矜持と、それを裏打ちする地道な練習の日々が、三井ゴールデン・グラブ賞5年連続受賞という快挙を支えている。そんな糸井選手の野球に懸ける想いを聞いた。

(2014年8月19日インタビュー)

地道な努力の積み重ねが
結果を生む

—まずは、昨年2013年度、5年連続5度目となる三井ゴールデン・グラブ賞(以下、三井GG賞)受賞おめでとうございます。

写真:糸井嘉男選手

©ORIX Buffaloes

ありがとうございます。非常に光栄です。

—2014年は、オリックス・バファローズに移籍されて2年目の年。チームは好成績で、クライマックスシリーズが視野に入ってきました。守備はもちろん打率も好調で、チームの主軸としても活躍されていますね。

個人的には常々“トリプルスリー”(打率3割ホームラン30本30盗塁)を目標に掲げています。守備では自信のある肩の強さだけは誰にも負けたくないですし、返球はすべてノーバウンドで投げたい。常にアグレッシブなプレーを意識しています。

—その身体能力の高さから“超人”とも呼ばれていますね。

ありがたいことで、その呼び名は結構気に入っています。

—プロとして意識されていることや、印象に残っている出来事はありますか。

調子の波を維持するのは難しいものの、この世界で生き残るにはひたすら練習を重ねるしかないと思っています。プロ11年目の今でも、はじめて野手として2軍で出場した試合のことは鮮明に覚えています。結果は5打数1安打。内野安打を1本打つのがやっとでした。「こんなん、よう打たんわ」と、プロの世界に立つことの厳しさを痛感しました。一方で、野球は失敗確率の高いスポーツ。気持ちの切り替えは、パフォーマンスにも大きく影響します。バッターならば10打席中3回打てれば一流打者になるわけですから、常に前向きな姿勢でいることが大切だと思います。

2006年に投手から外野手へと転向したときも、最初は全然うまくいきませんでした。当時はセンターでしたが、真正面から飛んでくるライナーは距離感をつかむのが難しく、他の選手のバッティング練習で捕球させてもらったりしていました。

—グラブへのこだわりも教えてください。

毎年、職人さんに手づくりしてもらうのですが、はめてみたときの感触やフィーリングを大切にしています。今年の“彼女”はこれ。革のとてもいい匂いがするんです。

活躍の裏にある
三井GG賞への想い

—2013年にはWBCに出場し、2014年には8年ぶりに開催される日米野球に備え、“侍ジャパン”の先行メンバー6名に選出されました。

日本代表として国を背負い、“負けたら終わり”という背水の陣で挑むため、こうした試合はシーズンとは別格の緊張感、責任感がありますね。特に、侍ジャパンの方は先行メンバーということで、チームを率いていく意識も持たなければと思っています。また、ミスをしてしまっても、気持ちを切り替えることが大事。大舞台でも失敗を恐れず、前向きな気持ちで挑みたいと思います。

—守備についているときは、どのようなことを意識していますか。

ピッチャーを盛り立てるということでしょうか。「打たれた!」という打球を外野の守備でアウトにできると、ピッチャーは気持ちが乗ってくるものだと思うんです。常にバッターの特徴や自軍のピッチャーの癖や打たれ方も考えて、守備に臨むように意識しています。

—そういった想いを込めた渾身のプレーが、三井GG賞受賞の原動力になったのかもしれませんね。

そうですね。はじめて受賞したときは本当にうれしかったです。最初は、自分とはまったく縁のない賞だと思っていたんです。日本ハム時代に外野手に転向した頃、新庄(剛志)さんや稲葉(篤紀)さん、(森本)稀哲さんは毎年のように三井GG賞を受賞されていました。「いいなぁ」とうらやましくもあり、憧れの賞でした。最近では三井GG賞の受賞は毎年必ず目標に掲げていますし、モチベーションアップにもつながっています。

打率や打点、盗塁数とは違い、守備は数字による記録や評価が難しいんですよね。それでも、三井GG賞があるから、一試合ごと、一球ごとの守備に集中して頑張ることができる。特別な賞だと思っています。

—では、最後にプロ野球選手を目指す子どもたちへのメッセージをお願いします。

自分自身、子どもの頃からずっと野球を続けてきました。他のスポーツをしている自分は想像できません。それだけ野球は素晴らしいスポーツなんだと、自信を持って言えますね。夢を持って、何かひとつ好きなことを見つけてそれを全うするために、地道に努力する姿勢を大切にしてください。自分も前進し続ける気持ちを忘れず、着実に成長していきたいと思います。

糸井 嘉男(いとい よしお)

1981年7月31日生まれ。父はトライアスロンの元選手、母はバレーボールの元国体選手というスポーツ一家に生まれ、小学生の頃に野球をはじめる。京都府立宮津高校、近畿大学を経て2003年にドラフト自由獲得枠で北海道日本ハムファイターズに入団。2006年、投手から外野手へと転向。俊足と強肩を武器に、走・攻・守で活躍を見せる。2013年、オリックス・バファローズへ移籍。2009年から5年連続で三井GG賞を受賞。

写真:糸井嘉男選手・吉田昌司さん

聞き手
三井住友建設 広報室 課長
吉田 昌司(よしだ まさし)さん

試合前のユニフォーム姿は、本物のスーパーマンのような迫力でした。そんな活躍する糸井選手からも、普段の練習が大事なんだと伺い、改めて基本の大切さを実感しました。今後の活躍からも目が離せません!

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