第53回 三井ゴールデン・グラブ賞

“中心選手”という自覚を持ち、全力でチームをけん引する  秋山翔吾選手 (埼玉西武ライオンズ/2017年度受賞)

埼玉西武ライオンズに入団して8シーズン目を迎えた 2018 年、秋山選手は30才の節目を迎え、生え抜きの中心選手として、2008年以来のリーグ優勝の期待がかかるチームを引っ張る存在である。主にセンターとして 2013 年と、2015年からは3年連続計4回の三井ゴールデン・グラブ賞に輝く守備の要。守備に対するこだわりと、野球に対する“覚悟”を聞いた。

(2018年8月18日インタビュー)

まずは「試合に出続けること」
そして「チームが勝利すること」

— 三井ゴールデン・グラブ賞(以下、三井GG賞)の常連となっている秋山選手。改めて、昨年度の受賞おめでとうございます。毎年安定して活躍されるため、どのようなことを心がけているのでしょうか。

ありがとうございます。やはりいつも心に留めていることは、とにかく「試合に出続けること」です。ケガに気を付け、成績を保ち、試合で使ってもらえるように準備を積み重ねています。

— チームの中心選手として周りを引っ張っていく上で、意識されていることはありますか?

チームを盛り上げていくために、自分の調子が良い時も悪い時も、変わらずに声を出すことを心がけています。プロなので個人成績も気になりますが、まずチームが勝てないと意味がない。特にライオンズは「選手一人ひとりの能力は高い」と言われながらも最近はなかなか優勝できなかったので、他の選手たちともコミュニケーションをとって、チームの士気を高めるようにしています。

— これまでには苦しい場面にも多く直面してきたことと思います。逆境の乗り越え方、メンタル面を整える秘訣などを教えてください。

正直、いまだに守備はいつも緊張の連続です。バッティングは、打てる時・打てない時があって仕方がない部分もありますが、守備は常に“100%”が求められますから。きちんと守って当たり前なので、常に怖いですね。毎回腹をくくって、「やるしかない」という気持ちでフィールドに向かっています。
守備については、プロで初めていただいた表彰が三井GG賞で、守備を評価してもらえたことはモチベーションになっていて、気持ちをすごく高めてくれる。これだけは他の選手には譲れない、という意地もありますしね。今でこそバッティング面でも注目していただけるようになりましたが、自分が生き残っていくためには守備が一番重要でした。連日試合がある中で、自分の守備を見ていただき、数字には表せない部分も評価してくださり、何度経験しても受賞の喜びはひとしおです。

写真:秋山翔吾選手

— 守備において欠かせないグラブですが、とても使い込んでいるようですね。

多くの選手はシーズンごとにグラブを交換しますが、このグラブはまだ二代目。実は、プロに入ってから1回しかグラブを替えていないんです。前のグラブも穴があくまで使い倒しました。グラブは使えば使うほど自分の手になじんでベストな状態になるので、もったいなくてなかなか「世代交代」できない。メーカーさんから毎年新しいモデルを提供していただくんですが、あまりにも使わなさ過ぎて、申し訳なく思っています(笑)。

引退する日までレギュラーで
納得できるプレーを続けたい

— 秋山選手が、野球人生でもっとも影響を受けた方はどなたでしょう。

小学校の時に亡くなった父です。野球好きで、私を将来野球選手にしたいと思っていたようで、物心ついたときには当たり前のように野球が身近にありました。父の存在は自分の中でとても大きかったですね。

写真:坂井遼太郎さんと秋山翔吾選手

— 秋山選手は社会貢献活動の一環として、ひとり親家庭のご家族をライオンズの試合に招待するという取り組みをされています。

ひとり親で働いていると、どうしても子どもと一緒にいる時間は少なくなってしまいます。自分もそうでしたが、そうした家庭では、自分たちで野球を見に行くという機会を企画するのは難しい。経済的・時間的に余裕もないなかで、こうした機会を提供できることで、野球を見ながら会話をしてもらって、家庭が明るくなって、楽しい想い出を作ってもらえたらと思って取り組んでいます。「また行きたいね」と思ってもらえたら嬉しいですね。選手としても、招待したからには試合に出て見てもらいたいと思いますから、使命感も生まれる。だから若い選手たちとも一緒にやっていけたらと考えています。

— これからの目標や、将来のビジョンはどのようにお考えですか。

引退するその日まで、レギュラーで活躍し続ける選手でいたいと思います。チームの状況や、自分の置かれている立場などで、納得できなくても辞めないといけないというのではなく、「もう自分のプレーができない、限界なので辞めます」と言えるような成績を残して、引退を選べる選手になりたい、というのが目標ですね。ですから、身体の準備でも、今だけ良ければいいということではなく、大変でも今やらなければいけないことにも取り組んでいます。

— 秋山選手にあこがれる子どもたちへ、一言メッセージをお願いします。

何かひとつでいいので、他の人に負けない自分だけの“武器”を見つけてほしいですね。肩の強さでも、脚や球のスピードでもいい。「これだけは負けない」というものがある選手は強いです。もちろん、ケガをしない強い身体も大事な武器になります!毎日少しずつでいいので、他人よりも努力することを心がけて頑張ってください。

写真:二川直和さんと秋山翔吾選手

秋山翔吾

1988年4月16日生まれ。神奈川県横須賀市出身。野球好きだった父の影響で2歳から野球を始め、横浜創学館高校・八戸大学を経て、2010年にドラフト3位で埼玉西武ライオンズに入団。2015年はシーズン216安打でNPB記録を塗り替え、最多安打受賞。2017年は最多安打に加え首位打者、ベストナインなど各タイトルを総なめにする活躍。

聞き手

写真:二川直和さん

二川直和ふたかわなおとさん
デンカ
CSR・広報室

秋山選手と私は歳も近く、互いに組織の中で中堅を担うなど重なる部分がありました。しかし、秋山選手の自身が果たすべき役割に対する考えの深さ、覚悟の強さは、トッププロだけに非常にレベルが高く、私も見習わなければならないと痛感しました。このような気づきを得られる機会をいただき、とても感謝しています。

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