2018年、パ・リーグ2位からクライマックスシリーズを制し、ついには日本一にまで登りつめた福岡ソフトバンクホークス。ドラマチックな下剋上を牽引した正捕手の甲斐選手に話を聞いた。
(2018年11月29日インタビュー)
―2017年、2018年と2年連続の三井ゴールデン・グラブ賞(以下、三井GG賞)受賞、おめでとうございます!改めて、受賞のお気持ちをお聞かせください。
素直に「嬉しい」の一言です。プロ入りする時から自分の“売り”は守備だと思っていましたし、「守備で勝負していきたい」という強い気持ちもありましたので、自分にとって三井GG賞というのは大変価値があるもの。今年もきちんと結果を残せて、本当に良かったです。
―今シーズンはチームとしても日本一に輝き、甲斐選手も日本シリーズ新記録となる「6連続盗塁阻止」を成し遂げ、MVPに選出されるなど大活躍でした。その中でもご自身で一番印象に残っているのはどのプレーでしょうか。
やはり日本シリーズ第6戦、初回一死一塁で、広輔さん(広島・田中広輔選手)の盗塁をアウトにできたことですね。最初は微妙な判定でセーフとされ、球場全体が異様な雰囲気に包まれたのですが、リプレー検証で覆ってアウトになり、ほっとしました。
―まさに日本一をソフトバンクに引き寄せる圧巻のプレーでした。甲斐選手の驚異的な盗塁阻止を称した「甲斐キャノン」という愛称もすっかり定着しましたが、ご自身は気に入っていらっしゃいますか。
自分では、強肩だとは決して思っていないんです。盗塁を刺せるのは捕球後の動作が速いからで、肩の強さは「キャノン砲」にはまだまだ及ばない(笑)。それでも、ファンの皆さんからそう呼んでいただけるのは嬉しいですね。
―捕手としてのこだわりや、日頃から守備で意識していることは何かありますか。
キャッチャーというのは、チームを「勝たせないといけない」存在です。いくら牽制アウトを取っても、盗塁を阻止しても、ゲームで負けてしまっては意味がない。そのためには、ピッチャーからはもちろんのこと、チーム全員から信頼を得ることが一番大切です。チーム内の誰よりも勝ちにこだわっていきたいですね。
―甲斐選手が捕手というポジションに就いたきっかけは。
高校まではずっと内野を守っていたんです。高校1年生の秋に、急に監督から「明日からキャッチャーやってみろ」と声を掛けられ、そこから突然、捕手人生が始まりました(笑)。でも子どもの頃からキャッチャーというポジションが好きでしたので、とても光栄で嬉しかったですね。監督との出会いがなければプロ入りもしていなかったと思いますし、今の自分はありませんでした。今でも監督には深く感謝しています。
写真提供:ベースボール・マガジン社
―プロ野球選手として毎年連続で活躍し、結果を出し続けるために心掛けていることは何ですか。
やはり試合までの万全な準備、それに尽きます。試合中に緊張したり、不安になったりすることももちろんありますが、ネガティブな気持ちを打ち消せるのは「練習量」しかありません。「ここまでやってきたのだから大丈夫」と自分を信じられるくらい、ひたむきに努力する。納得できるまで準備していれば、ミスをしても再び前を向けるものです。
―ケガやスランプなどの苦しい時期は、どうやって乗り越えましたか。
心身ともに苦しい時に支えとなってくれたのは母の存在です。私は育成選手からのスタートだったこともあり、ずいぶん心配もかけたと思いますが、いつも見守ってくれた母には感謝の気持ちしかありません。困難な時期があったからこそ、今の自分の環境に慣れてしまってはいけないとも思います。初心を忘れないことが何より大事です。
―甲斐選手は捕手というポジション柄、「ここ一番」という大勝負を何度も経験していることと思います。プレッシャーがかかる場面での判断のコツはありますか。
コースや球種について“二択”を迫られる場面では、自分の考えよりもピッチャーの心理を優先させるようにしています。今ピッチャーは何を思い、何を感じているのか。大事な局面になればなるほど、ピッチャーの心に寄り添い一緒に乗り越えるようにしています。
表彰式でトロフィーを受け取る甲斐選手
―来季の目標を教えてください。
今シーズンは日本一にこそなれましたが、レギュラーシーズンだけ見れば結果は2位。キャッチャーとして責任を感じましたし、悔しい気持ちが残るシーズンでしたので、来季は絶対にリーグ優勝を果たしたいです。もっともっと力をつけて、ホークスの正捕手の座を守り続け、さらには“強いホークス”の位置づけを確固たるものにしていきたいです。
―最後に大勢のファンの子どもたちへメッセージをお願いします。
野球じゃなくとも、何か自分の好きなもの、夢中になれることを見つけてほしいですね。「これだ」というものが見つかったら、全力で取り組んでほしい。まずは「好き」と思える気持ちが一番大切です!
甲斐 拓也
1992年11月5日生まれ。大分県大分市出身。小学校1年生の時に3歳上 の兄の影響で野球を始め、2010年ドラフトにて、福岡ソフトバンクホークスに育成6位指名を受ける。2014年からは毎年開幕一軍の座を射止め、2017年、2018年は2年連続で三井ゴールデン・グラブ賞を受賞。鋭い送球で盗塁を刺すプレーからついた愛称は「甲斐キャノン」。
入野 竜郎さん
三井不動産 広報部
ブランド・マネジメントグループ
オリンピック・パラリンピックチーム
甲斐選手の迫力溢れるプレー姿とは対照的な謙虚な人柄が印象的で、ますますファンになりました。「いろんな場面を想定して、自分で納得できるまで準備する」、スポーツに限らず通じる大事な姿勢を再認識させられました。