第53回 三井ゴールデン・グラブ賞

人間万事塞翁が馬。逆境をチャンスに進み続ける 荻野貴司選手 千葉ロッテマリーンズ(2021年度受賞)

現在36歳、千葉ロッテマリーンズ入団後13年間、外野手としてチームを支えてきた荻野貴司選手。
度重なるケガを乗り越えながら今もなお記録を更新し続けるベテランに、その強さの秘訣を伺った。

(2022年8月24日インタビュー)

快挙の裏には「基本」の徹底

— 荻野選手は、三井ゴールデン・グラブ賞をこれまでに2019年と2021年の2回受賞されています。守備を表彰する本賞について、ご自身の想いを教えてください。

素直に嬉しく思います。守備を評価されることで、自分がチームの勝利に貢献できているのかなと自信がつきました。賞を獲ることを目標に頑張ってきたというわけではありませんが、とにかく1試合でも多く出たいという気持ちで日々トレーニングを積み重ねてきた結果の受賞だと思っています。まだまだ足りないところも多いので、さらに上を目指して頑張っていきたいです。

— 2022年8月10日に1000安打を達成され、その翌日には史上4人目、球団初となるプロ入り後13年連続での二桁盗塁を達成されました。これまで最多安打や盗塁王、ベストナインや本賞の受賞も含め、「走・攻・守」でチームに貢献されている荻野選手ですが、プロとして試合で活躍し、結果を残すために普段から心掛けていることは何ですか。

コンディションを一定に保つために、睡眠やストレッチなど、本当に基本的なことを大切にしています。疲れを溜めないように、トレーナーさんの力も借りてその日の疲労はなるべくその日のうちに取ります。自分の場合、体の調子がメンタルに大きく影響するので、メンタル面の安定のためにも、体の調子の波を無くすことを意識しています。

写真:荻野貴司選手

きっかけは「人間万事塞翁が馬」。ケガをチャンスと捉える

— 13年間の長いプロ生活の中では、ケガに悩まされた時期が多く、悔しい気持ちや苦しい経験を何度もされてきたと思います。どのように乗り越えてきたのでしょうか。

最初は、ケガをするととても落ち込んだり、辛いリハビリが嫌になったりすることもありました。しかしある時、「人間万事塞翁が馬」という言葉と出会いました。人生における幸、不幸は予測不可能で、ものごとが上手くいっていないときでもそれが幸せに転じることもあるという意味です。知り合いの方から偶然聞いた言葉でしたが、当時ケガをしていた自分の心に、とても刺さりました。

それ以来、ケガをただ不運だと嘆くのではなく、自分が成長できるチャンスだと思うようになりました。ケガをした直後はやはり悔しいし、チームに申し訳ないという気持ちになります。しかしできるだけ早く気持ちを切り替えることが重要です。ケガを好機と捉え、自分の体とじっくり向き合い、今の自分に足りないものは何か、どのような体を作っていけばよいのか、体作りを基礎から考え直すようにしています。

何度もケガをする度に積み上げてきたものが、少なからず今の安定に繋がっていると思います。

写真:坂井遼太郎さんと荻野貴司選手

— 荻野選手はチームの中心選手であり、現在の所属選手の中では最年長です。マリーンズにとって欠かすことのできない存在だと思いますが、ベテランとして若手選手や、チームメートとコミュニケーションを取ったりアドバイスをしたりする上で心がけていることはありますか?

あまり壁を作らないことを意識しています。自分自身、先輩という雰囲気を出すのが苦手なこともあり、後輩は自分が先輩だからと遠慮することなく気軽に話しかけてくれます。アドバイスはあまり得意な方ではありませんが、なるべく自分の経験を伝えることを意識しています。長い間プロ生活を送ってきたからこそ話せることがあるはずです。

荻野貴司

1985年生まれ。奈良県出身。小学4年生で野球を始め、奈良県立郡山高校、関西学院大学を経てトヨタ自動車へ入社後、2009年のドラフト1位で千葉ロッテマリーンズに入団。幾度ものケガを乗り越え2022年は13年連続二桁盗塁、1000安打を達成するなど、外野手としてチームを支える。

聞き手

写真:宗暁函さん

宗暁函そうしょはんさん
東洋エンジニアリング 広報・IR部

荻野選手はとてもやさしい語り口で、終始和やかな雰囲気でした。レプリカユニフォームにも快くサインをいただきました。当社新習志野の本社はマリンスタジアムを眺められる近い場所に位置しています。一緒に地元を盛り上げていきたいと思います。Go MARINES!

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