─近本選手が外野手として理想とする人はいらっしゃいますか？

陽岱鋼さんはボールに対する入り方がすごく余裕があって、あのような動き方ができるようになりたいと思っています。センターは走る距離が長いので、最初から100%で打球を追いかけない方が良いんです。全力で走ってしまうと、見込みがずれていた時に修正するのに時間がかかるので、あえてゆっくり判断してから動き出すようにした方が、結果的に捕れる可能性が高まります。

─守備の際は他にどのようなことを意識していますか？

一番考えているのは、打球がどう来るのかということです。たとえば村上投手と青柳投手では、全然球質が違うんですよ。同じバッターが打っても村上投手のボールはスピンがかかってフライになり、青柳投手のボールは回転がないので左中間に来たらドローする。バッターによっても違いますよね。そこに点差などの状況も踏まえて、勝負の仕方を変えています。まあ、いくらイメージしても、外れることも多いんですけど（笑）。

─近本選手はSMBC日本シリーズでのMVPも記憶に新しいところです。大一番や勝負どころに臨む際、プレッシャーに打ち勝つ方法を教えてください。

2年ほど前から意識しているのは「そのときの自分、頑張れ」という言葉です。打席に立つ場面や、人前で話すこと、受験など、将来に不安なことがあったとしても、今はできることをするしかない。だから本番のことは「そのときの俺、頑張れ」と思うだけにしています。

フォークやスライダーが来たらどうしようと心配していたら、ストレートすら打てません。ストレートが来たら絶対打つと心に決めて、フォークが来たなら見逃すか頑張って当てるかは、そのときの自分に頑張ってもらいます（笑）。

─最後に、読者の方やプロ野球選手を目指す子どもたちにメッセージをお願いします。

僕は一つの目標に向かって進み続けるというより、そのときどきで好きになったことを全力でやることを大事にしてきました。高校の時も大学の時もプロ野球選手を目指していたわけではなく、気付けばプロになっていたという感じなんです。社会人を経験してからの入団ですから、年齢的には一番遅く入っていますが、それが間違いだったとは思いません。皆さんもぜひ、好きなことに全力で取り組んでください。

聞き手

平田 豊彦 ( ひらた とよひこ ) さん
三井住友建設
経営企画本部 広報室
顧問

阪神タイガースが38年ぶりに日本一になった年に、3年連続受賞された近本選手に受賞インタビューする機会をいただきました。ファンとしてはアッという間のインタビュー時間でした。最後に、近本選手から「楽しいインタビューでした」と言ってもらい、至福の時間でした。