選手インタビュー 特別対談

三井ゴールデン・グラブ賞にかけた誇りと想い 宮本慎也氏 稲葉篤紀氏

守備のうまさは選手の大きな武器

写真:宮本慎也氏

宮本:メディアではバッティングがクローズアップされがちだけど、信頼を得るという点ではやっぱり守備は大事だよね。守備が良ければ、少々打てなくても使ってもらえるから、レギュラーへの近道だし。守備を買われてる場合は、レギュラーから外されるということはあまりないから、打席もたくさん回るし、いろんな経験も積める。そう考えれば、選手にとっては守備のうまさは大きな武器だよね。

稲葉:そうですね。

宮本:俺も稲葉も2000本安打の記録を達成したけど、それはたくさん試合に出られたからなんだよね。試合に出た分だけ積み重ねていけたから、記録につながった。だから俺は「なぜ2000本打てたんですか?」って聞かれたら、「守備が良かったからです」って答えてる。

稲葉:確かにそうだと思います。逆に、バッティングが悪いときって、守備にも影響するじゃないですか。だから僕は、「守備は守備」と切り替えをちゃんとしようとしていましたね。

宮本:それはすごく大事だよな。守備とバッティングって、はっきり言って種目が違う。そこがほかのスポーツと違うところだよね。いろんな種目が入っているのが野球。だから、「守るときは打つことを考えるな」って子どもの時からよく教わるよね。

稲葉:言われますね。

宮本:でもたぶん、外野って考えちゃうんだと思う。

稲葉:そう! 外野はね、時間があるんですよね(笑)。外野で守りについているときにバッティングのこと考えて、コーチに怒られたことあります。

宮本:俺も、サードに移ってからは、そういうことあったよ。サードって、忙しさでいうとそうでもないから。ファーストは違うところに飛んでいってもボールが回って来るから忙しいけどな。みんな、ファーストを簡単に考えすぎだよね。

稲葉:そうなんですよ(笑)。あと、外野ならどこを守っても同じだろうとかね。

宮本:そうだよね。

最年長受賞、そして引退

写真:稲葉篤紀氏

宮本:2012年、最後に三井ゴールデン・グラブ賞を受賞した時は、もう体力は完全に落ちてたな。経験を積んできた分、引き出しが多いからなんとかって感じ。若いうちにたくさん練習したことも良かったんだと思う。新聞で原(辰徳)さんが「若いうちに汗を流していないやつは、歳を取ったときに涙を流す」とおっしゃってたんだけど、すごくいい言葉だよね。「苦労は若いうちに買ってでもやれ」ともいうけど、体が思うように動く時に無意識にできるくらいまで練習を積んだことが、結果的に長くプレーできることにつながったんだと思う。

稲葉:僕は外野からファーストに移りましたけど、もともと学生時代にファーストをやっていたんで、安易に考えてたんです。でも、ファーストってキャッチャーの次にボールを触るし、サインは覚えなきゃいけないし、やることが多くて難しいポジションなんだなってあらためて感じました。だからこそ、ファーストでも三井ゴールデン・グラブ賞を取るぞ、という目標を常に持ち続けてましたね。

宮本:「歳を取ったと思ったら負けだぞ」とよく言われたけど、それは違う気がする。若いときと一緒の気持ちで無理してやったらケガすることもあるだろうし、年齢を自覚して、自分に合ったことをやるというのを意識してたね。最後のほうって、オフのトレーニングがきつくなかった?

稲葉:いやあ、きつかったです。

宮本:こういうプレーをやりたいから、それに向けたトレーニングをやろうというのがなくなるんだよね。ただ「体動かさないとやばい」って。

稲葉:ウォーミングアップで、もうきついんですよね。全体のアップについていくのが大変で…。

宮本:だから、だんだん球場入りが早くなるんだよね。いきなりやったらケガするのが分かってるから。歳を取るほど、一日のうち野球に費やす時間が長くなって、ほとんど一日中野球だったよ(笑)。

稲葉:あと、周りからの扱いが良くなってくるじゃないですか。監督や首脳陣に気を遣われるようになるというか。僕は、それがすごく嫌で。気を遣わせないようにやろうっていうのはありました。

宮本:そうそう。監督に気を遣わせるのが一番嫌だよね。だから俺は、自分で辞められる選手になりたいと思ってた。

稲葉:夏に入ってすぐくらいに「今年で辞めるわ」って電話くれたじゃないですか。「まだできるじゃないですか」って言ったら、「もうやり切ったわ」って。かっこいいと思いました。

宮本:近い選手の中では、一番最初に伝えたんじゃないかな。

稲葉:メディアに出る前に知らせてくれて、うれしかったです。で、「お前はもう1年やれ」ですからね(笑)。

宮本:実は俺、その前の年に球団に一回辞めるって言ってるんだよね。でも、あそこで辞めてたら、後悔してたかもしれないなって。もう1年やって、すごく苦労して嫌な思いもたくさんしたけど、「本当にやり切った」という感じがした。だから、稲葉が辞めると言った時も、もう一年やってみたらってね。

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